弦楽四重奏

連休最終日。お昼過ぎに父のお墓参りに行く。お盆近辺は母も私も日程が合わない可能性が高く、ゆっくりできそうな今日行くことにした。運転していると、右腕にあたる陽射しがヒリヒリするほどの暑さ。くっきりとした青空で、いいお参りができた。

そういえば、昨年の7月だったか、友人が出演しているコンサートに誘われ飲み仲間数人で聴きに行った。プログラムは。管楽器だけのものや、チェロの独奏や、ピアノと弦楽器のものや、弦楽四重奏など盛りだくさん。

2人のフルート奏者だけの演奏の時、ふと、妹を思い出した。彼女は高校時代オーケストラ部でフルートをやっていた。そして、弦楽四重奏が始まった途端、7年前とすべてが重なってしまった。

夫についての第一報を聞いたのは、東京のどこかのコンサートホールで弦楽四重奏を聞いている時だった。

あの頃、私は妹のことで精神的にぎりぎりの状態から一転、何に対してもとても攻撃的で投げやりになっていた。直接被害を受けていたのは夫だった。私自身は、夫の反対を押し切って会社も辞め、週2回程度通って細々と仕事をするだけで外出もあまりせず、外に出るとうちに帰りたくない気持ちで一杯になる。突然海に行ったり、ホームで何時間も座っていたり、幼馴染のFのところに転がり込んだりして、実際、うちに帰らないこともあった。毎晩、答えのない言い争いを力なくくり返し、2人にとって家の中は針のむしろのようだった。
そんな中でも、買出しを含めて食事を作る事から、布団の上げ下ろしまで、うちの中のことが何も出来なくなっていた私と共に、それでいいから、と言って、彼は1週間の献立を作ってくれた。月曜日は豆腐、火曜日は焼き魚、水曜日は野菜炒め、木曜日はお肉を焼く日、金曜日は何か作れたら作ってみよう、と。週末はたいてい外食となった。そうやって、何をしようにも力が出なくて、涙が出てしまう私に、身の回りのことから現実を生きることを考えて一緒にやってくれる人だった。それなのに、そんな彼に一番ひどく当たっていた。自分のことばかり声高に言っているだけで、彼の哀しみに全く無頓着だった。

そんな状態で送り出した日高山行だった。

昼間、Fが行けなくなったという弦楽四重奏のチケットを受け取り、夕方から会場で聴いていた。1部が終わった後、休憩があり、何やら呼び出しが入ったが全く聞いていなかった。なかなか第2部が始まらず、今度は係りの人が告知板のようなものを持って呼び出しをしていた。そこに私の名前が書いてある。すぐに事務所に連れて行かれ、「旦那さんが亡くなったのでどこそこに電話をしてください」とのメモを渡された。電話をかけた相手は、夫の会社の同僚だったか、札幌の母だったか、定かではない。その後、どうやって戻ったか覚えてないが、自宅に戻っていた。すぐにFとカモシカメンバーが集まってくれた。名古屋から義母と義妹もきた。二人を近くの駅まで迎えた風景を覚えている。しかし、その後は、何をどうやったのか。。


ここ最近の夫についての作業は、昨年の夏の弦楽四重奏がきっかけになっているようである。その頃、夫のクラブ関係者に宛てて書いた文章です。

皆様、本当にご無沙汰しておりました。

先週末、友人が出演しているコンサートに出かけたところ、弦楽四重奏を聴きながら突然夫のことを思い出しました。というより、彼が呼びかけてきたような気がした、というか。。それからは涙が止まらず、すぐに会場を後にしてしまいました。

その夜はずっと改めてみなさんに編集していただいた文集を読みながら、夫を想いつつ朝を迎えました。すると、最後のページにこのHPがあることに初めて気がつき投稿している次第です。文集だけでなく、HPまで作ってくれていたとは。いい仲間に恵まれて、本当にありがとうございます。

聞くところによると、お盆にはあちらから帰ってくるそうですね。それできっとふみがこの場所を教えてくれたのではないかな?と思います。

私の方は、お陰さまで色々な方に支えられて、現在札幌にて講師として2年目を迎えています。

今週末、夫の実家のある名古屋(というより、妹さん夫妻の新居のある岐阜にて。今はそこで母も一緒に暮らしています)で七回忌を執り行います。
年月が経つのは、本当に早いものです。
2004年8月


昨年のコンサート会場から飛び出した後、しばらく川辺を歩いてからFに電話をしている。その時、彼女が言ったのだ。お盆の頃は帰ってきてるんだって。だから、今晩はゆっくり想って話してみるといいよ、と。実は、これまでずっと彼のことを考えている時というのは、たいていどこからともなく蝶が現れる。それか、猫と目が合う。その時は猫が側にやってきていた。色の濃いしなやかの動きをする猫が最初は壁の向こうからこちらを窺っていて、Fと話しているうちに足元にやってきていた。いつもは名古屋を心配していてあちらにいるのだろうが、こういう時になると様子を見に来てくれるのだな、と思って、また泣けてきたものだ。

最近は、こういうことがめっきり減ってしまったけど、そんな機会があると、「ありがとう。何だかんだ言いながらも元気にやっているよ。」と話し掛けているかな。